2014年03月24日

3月 有備館雪景色幻想。洞川院とこけし巡り。

岩出山伊達家の歴史公園。
清らかな天華の水彩画。

2014年3月某日

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12有備館s.jpg15岩出山駅s.jpg16岩出山駅騎馬像s.jpg

 先の震災からまもなく3年。倒壊した岩出山の「有備館」の主屋も、昨年11月にやっと復元が着手され、来年3月に完成予定らしい。県内でも屈指の歴史公園が現在、無料開放されていると聞き、いつもの湯遊びがてら二人で訪ねてみることにした。 
  仙台から車で約1時間。岩出山は、伊達政宗が天正19(1591)年、米沢から居城を移し仙台に移るまでの約12年間を過ごした地で、以後、代々に渡り岩出山伊達家が治めた。伊達家家臣や子弟の学問所となった「有備館」は、日本最古の学校建築として知られ、現在、庭園とともに国の史跡および名勝に指定されている。
 降りだした雪のせいか、園の周辺は人影もなく静まり返っていた。管理棟の職員に軽く会釈をし、中へと進む。地割れや陥没の被害に見舞われた庭園は、現在、西苑から庭園出先までの一部のみの公開のようだ。資料によれば庭園が整備されたのは正徳5(1715)年頃。作庭は仙台藩茶道頭の石州流三代清水道竿によるもので、造りは池中に島を配した廻遊式池泉庭園。園内には樹齢300年を超える大木が点在し、四季折々の景色の美しさでも愛されている。石や燈篭を配さず、自然物だけで構成されているのもこの庭の特筆される点で、こうした旧態の大名庭園は、現在、他には会津若松の「御薬園」だけだという。
 身も凍る寒さのなか、私たちを待っていたのは筆舌に尽くしがたい景色だった。苔庭も飛石も幹も梢も浮島も、すべてがうっすらと淡い雪化粧で覆われている。風ひとつない無音の園内で、ふわりふわりと踊りながら降りてくる粉雪は、まるで天からこぼれた光の胞子のようだ。どこまでも静謐なその世界に寒さも忘れ、感嘆しては立ち止まり、何度もシャッターを切ってしまった。冬の有備館は、思わぬ絶景を独り占めにできる穴場スポットだ。すぐ側にはJR有備館駅もあり、かつてJR仙台駅構内にあった政宗騎馬像も帰郷し、懐かしい故郷の天を仰いでいた。

18ホテル客室よりs.jpg19ホテルこけし展示s.jpg21通路こけしと花s.jpg24売店わらび餅s.jpg
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38夕食s.jpg37夕食s.jpg26夕食お酒s.jpg45朝食s.jpg

圧巻のこけしコレクションと
ひと足早い春の美味彩膳。

 本降りとなってきた雪に遅い春を思いながら、ホテルにチェックイン。部屋から見える鳴子小学校の姿に「そういえば、そろそろ卒業式ね」と、手を離れた子供たちの思い出話に花が咲く。「こけし絵付けもやったなぁ」と、懐かしい家族旅行の話題ついでに、ふとホテル館内にある「こけし展示館」を思い出し、足を運んでみることにした。 〈松宮コレクション〉と呼ばれるこのコーナーは、鳴子系こけしを筆頭に個人の蒐集家が東北各地から集めた9系統のこけしが一堂に展示されている。その数、なんと2,000体。中には帽子を被ったものや、エキゾチックなものもあり、見ていて飽きない。聞けば《鳴子歴代名人工作》のケースは、特にファンにはたまらない逸品揃いだという。
 ぶらり立ち寄った売店では、シンプルなこけし柄の〈わらび餅〉を発見。聞けば、すぐ近くにある老舗のものらしい。連れと相談し、早速、明日訪ねることにした。
 夕食前にひと風呂浴び、昭和30年代から変わらないという、こけしデザインの浴衣に身を包んでレストランへと向かう。お楽しみの料理には冬メニューの他、ひとあし早い春を楽しむ、こごみや山うどなどの揚げたて「天ぷら」や「若筍椀」も並んでいる。注文してからバーナーで焼き目をつける「炙りチャーシュー」は、舌の上でとろける旨さ。ホテルの方の話によれば、常連客が多い鳴子ホテルは、来るたび楽しいブッフェメニューの開発に力を入れているという。一番のロングセラーは?と尋ねると、目の前で焼き上げる「鮎の姿焼き」との答え。なるほど。注文した清酒「鳴子の湯」にもよく合うスタンダードな酒の友だ。酒造好適米、豊錦を使った「鳴子の湯」は、地元で200年以上続く田中酒造のもの。ふくよかでキレのよいバランスのとれた旨口は、料理との相性も抜群だった。
 朝食には定番の餅料理に加え、「パンケーキ」も初お目見え。連れ曰く、トレンドにも敏感なホテルの新メニューには、毎回、期待度大なのだという(笑)。

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3代続く名工の手ほどき。
夫婦水いらずの絵付け体験。

 チェックアウト後は、周辺を少し散策。以前からその佇まいが気になっていた、こけし工房「岡仁(おかじん)」の暖簾をくぐる。工房で木地を削っていた手を止め、快く迎え入れてくれた親方の岡崎さんによれば、店は創業100年あまり。現在3代目だという。時代の波に押され鳴子のこけし工人も、年々少なくなっているそうだ。お話を伺っているうちに、急きょキーホルダーの絵付け体験(一人500円)に挑戦することに。鳴子こけしの色彩は黒、赤、緑の3色。連れと二人、緊張が走る筆先で恐る恐る用意された木地に絵を描く。世辞とはいえ、親方にも褒められた我ながら味わいのある出来栄え(写真右)に、少々自負(笑)。思わぬ旅の記念となった。
 40年のキャリアを持つ名工人の親方の作品は、ほぼ完売状態で、現在、手元にはほとんど無いという。「この大きいのが祖父。その左が親父、その隣が私が初めて絵付けしたやつね。いまの(一番左)に比べると、ぎこちないでしょ(笑)」と、親子3代に渡る作品と、自身の歴史を並べて見せてくれた。親方によれば、工人毎にこけしの顔は異なり、一目で作者が分かるそうだ。ちなみに「岡仁」の名の由来は、初代、岡崎仁三郎にちなんだもの。4代目の息子の代になれば、正真正銘の「岡仁」にまた戻るよ、と嬉しそうに語ってくれた。

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目を見張る総うるしの贅空間。
知られざる鳴子の必見古刹。

 知る人ぞ知る「洞川院(とうせんいん)」は、温泉街から鬼首に向かう大橋を渡った先にある。杉やヒバの大木が立ち並ぶ参道の奥には、黒々とした伽藍が、白い雪と対照的に鮮やかなコントラストで佇んでいた。
 寺のご住職の案内で本堂に足を踏み入れたとたん、その光景に息を呑む。床から柱、天井に至るまで、〈漆黒〉の総うるしが施されている。さらに内陣の須弥壇は、まばゆいばかりの金箔だ。ご住職、菅原さんの話によれば、寺の背後にある三条山には、かつて足利家3代目、足利義氏の孫で奥州一円を支配した石塔義房(いしとうよしふさ)が築城した葉山城があり、寺もまた、その南北朝時代に由来するとのこと。この辺りは古く、平泉に先駆け、豊富な埋蔵量の金山で栄えたようだ。その量は東大寺の大仏の金箔を全てまかなったというから驚く。伽藍を覆う絢爛豪華な金と漆は、まさに歴史を彷彿とさせる。
 築250年の本堂を修復したのは2008年。扱いが非常に難しい漆の施工には、地元を含め全国から5社の漆職人が集結し、完成まで約1年半かかったという。中には日光の東照宮や、平泉の金色堂を手がけた職人もいたというから、何とも贅沢な話だ。
 興味深いのは伽藍だけではない。御年55歳というご住職は、東京大学を卒業後、コンサルタント会社に20年程務めたという経歴の持ち主。立板に水の弁舌も軽快で、聞けば、アブダビコンバットの88kg級では決勝まで進出した格闘家だとか。境内には山伏に長く信仰されてきたという由緒ある観音像や、義経弁慶一行にまつわる伝説も残り、魅力あふれる人柄とその軽妙な話術に、連れの興味も津々だったようだ。

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知るほど深いこけしの世界。
老舗和菓子のユニーク喫茶。

 次に向かった先は、鳴子こけしの販売をはじめ、製作過程やその歴史資料を一堂に展示している「岩下こけし資料館」。館内には、日本最古のろくろで作られた古木器や、ろくろ師の保護を定めた信長や秀吉の書状など、貴重な文献もある。
 東北地方で生まれたこけしは、農閑期となる冬、人々が出かけた湯治場で子供の土産に買い求めたのが始まりとのこと。やがて、大人の鑑賞用として発展。特に鳴子は、国内最大の伝統こけし産地だという。鳴子こけしの特徴は胴が太く、頭がはめ込み式で首が廻り〈キュッ、キュッ〉と音が鳴る。売店コーナーには伝統こけしの他、創作こけしや雛こけし、昔懐かしい木地玩具や漆器等も豊富に揃っていた。
 つぶらな瞳が可愛らしいこけしと目が合い、作者を伺うと、自らも女性こけし工人である店のオーナー、遊佐さんの作品とのこと。最近の人気は、魔除けの縁起を担いだ、木目の美しい槐(えんじゅ)製。店内には、大崎地区で最大だという《竈神》も睨みをきかせ、観光客の驚きを誘っていた。
 再び温泉街に戻り、昨夜、ホテルで見つけた〈わらび餅〉の「玉子屋本店」へ寄り道。〈おかしときっさ たまごや〉と書かれた看板奥のドアを開けたとたん、先客とビートルズナンバーをセッションするマスターの姿が飛び込んできた。壁にはジョンレノンの愛用ギター〈Epiphone Casino〉も。〈鳴子のジョン・レノン〉こと、オーナーの宮本さんは、自他ともに認める大のビートルズファン。現在もライブに出演する傍ら、5代目菓子職人として、店で出す和洋菓子を作りづつけている。
 店の創業は明治10(1877)年。旅行客が気軽に立ち寄れる場づくりを目指し、喫茶店を始めたのは30年程前。オーナーの趣味で埋め尽くされた店内は、どこかノスタルジックな心地よさ。一角には、わらび餅の歴代包装紙といった老舗ならではの資料の他、大人好みのスタンダードな洋菓子が並ぶガラスケースもあった。わらび餅に追加して、私は杏ジャムのタルトに好みでブランデーをかけていただく「タルト・コニャック」(252円)、連れは「パリブレストのシュークリーム」(210円)を注文。本物のワラビ粉を使ったわらび餅は、ゆべしを思わせる歯応えで風味も豊かだった。
 まだまだ雪深い鳴子に、ちいさな春の兆しを訪ねた3月。旅の喜びとはつまり、懐かしい記憶を温める、会いたいひとのいる幸せだ。魅力的な施設はもとより、語り合うほどに再会したくなる人々とのふれあいに、ひと足早い春の訪れを感じたひとときだった。


※記事内に表示の価格は2014年3月現在のものです。




posted by narukoaruku at 12:01 | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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