2013年10月01日

9月 間欠泉と地獄谷巡り

黄金色に輝く秋の里山に、
心揺さぶる旅情を求めて。

2013年9月某日

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 自然界の万物を〈木・火・土・金・水〉で表す陰陽五行の世界では、秋は「金(こん)」だという。「金」は文字通り黄金色。この季節、秋風と優雅に踊る黄金色の稲穂を見ていると、まったく共感せずにはいられない。長く厳しい冬へと向かう刹那の季節。低く垂れこめた靄が、しっとりと夢のような景色を見せるなか、絢爛な彩りで賑わう喧噪前の静かな旅情を求め、連れと2人、再び鳴子へ車を走らせる。


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鬼の名に見る猛々しい息吹。
大自然の神秘、間歇泉。

 温泉街から鳴子ダムと荒雄湖沿いに国道108号線を北上し、荒雄湖畔公園から県道171号線を、吹上高原キャンプ場方面へ進むこと約20分。着いた先は「鬼首 おにこうべ」。伝説によれば、「鬼首」の名は、平安時代、征夷大将軍の坂上田村麻呂との戦いに敗れた陸奥国の酋長で、その武勇から〈鬼〉と呼ばれた大竹丸が、この地で斬首されたことに由来するという。周囲は一大地熱地帯で、高温の温泉や噴気帯が数多く存在ししている。ここには、東北で有名な間欠泉がある。

 折りから降り出した霧雨のなか、駐車場に車を停め「間欠泉センター」へ。まずは、2階にある入口で入園料(大人1名 400円)を支払う。間欠泉は食堂や土産物屋のある建物の階段を下りた先にあるようだ。現在、噴出しているのは「弁天」「雲竜」と呼ばれる2つ。そのうち「弁天」は、約10分間隔で頭上高く熱泉を吹き上げる姿が見られるという。
 人影もまばらな園内には、足湯や、80度を超える熱泉を利用して、温泉卵をつくる専用の施設もある。早速、土産物屋で生卵(1個40円・塩付)を購入し、傍らのザルで、のんびりと間欠泉&温泉卵待ち。その日の天候にもよるが、半熟の温泉卵なら約10分、固ゆでは約15分程で出来上がるという。


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轟音と熱湯の温泉劇場。
風雅でワイルドな大露天風呂。

 やがて「弁天」に、ふつふつと予兆が現れはじめた。その勢いはあっという間に大きくなり、轟音と共に、地下18mから熱泉が一気に空中高く躍り出る。高さは10mはある。濛々とした湯煙とともに辺りに降り注ぐ飛沫は、まさに迫力満点。訪れていた誰もが立ち止まって頭上を仰いでいる。やがて勢いは次第に小さくなり、噴出は終了。何事もなかったように、熱を帯びた辺りの空気を霧雨がクールダウンし始めた。「忘れてた!」と、大自然の驚異を目の当たりに、うっかり半熟のタイミングを逃してしまった卵を、連れが慌てて引き上げに向かう。アツアツの卵は、固ゆでながらも、しっとりと濃厚な黄味の美味さがまさに絶品だった。
 ところで、この間欠泉敷地内には、一見、池かと見間違うほどの広さを誇る混浴の大露天風呂もある。吹上沢の流れに寄り添い、風雅な緑陰に抱かれた湯船は、100人は入れるかもしれない。風呂の廻りは一部、木塀や葦簀(よしず)で、目隠しがされているものの、基本的には、まる見えというワイルドさ。「男のひとが入ってたの!」混浴と知らず、好奇心で中の様子を見に行った連れが、驚いた表情で戻ってきた(笑)。
 「いい湯だよ、最初は抵抗あるだろうけど(笑)」湯上りに涼んでいた男性の話では、ここを初めて訪れる観光客は、みな驚くそうだ。とはいえ、素晴らしい佇まいに、湯船の縁に腰を下ろし、景色と足湯を楽しんでいくという。男女共に勇気を試される風呂だが、人のいない時間や季節なら、穴場中の穴場だ。たとえ、ひるんで風呂が無理でも、少なくとも、ここを訪れるなら生卵は必携だ(笑)。 
 風呂の奥にある階段を下りると、吹上沢と風呂から溢れた源泉が混ざり合い流れ落ちる、〈湯滝〉もあった。この周囲だけは雨の寒さもどこへやら、マイナスイオンたっぷりの、熱気に包まれた天然のサウナ。自然はまさに、繊細で豪放大胆な療法士だ。


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16地獄谷s.jpg21地獄谷玉子茹場s.jpg20地獄谷紫地獄あたりs.jpg
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大地が生んだ天然の温室。
緑と熱気の、吹上地獄谷。

 間欠泉から車で約5分の場所には「吹上地獄谷」もある。ここは、100度近い源泉が随所に自噴する沢沿いに、片道約30分の遊歩道が整備され、鬼首の地熱をより身近で体感できるスポットだ。広い駐車場に設置された案内板には英語、中国語、韓国語も併記され、その人気の高さが伺える。
 遊歩道は、駐車場脇から降りる階段が入口のようだ。硫黄の香りが立ち込めたコースには、吊り橋や木道、休憩ベンチが整備され、ところどころに見どころを紹介する案内板もある。周囲の静けさに、ボコボコッと響き渡る噴気孔の不気味な音色と、べったりと肌に吸い付く高湿度の熱気は、まさに温室さながら。ミソハギやホトトギスがひっそり咲く美しい森林浴の道ながら、いつ噴き出すか分からない熱湯への緊張感は、なかなかに刺激的だ。
 ほどなく「紫地獄」に出た。案内書によれば、仏教界で極楽にたなびく紫雲になぞらえ、ここを地獄谷の極楽に例えたという。ふと見ると、「卵湯」と名付けられた天然の湯だまりを発見。どうやら、行きすがら、卵をこの熱泉に浸しておくと、帰ってくる頃に出来上がる算段らしい。かつて、この地域の人々は、この熱泉に洗米を浸し、独特の風味を持つ美味い白飯を炊いたという。豊かな湯に恵まれた鳴子・鬼首界隈では、人のみならず、卵も米も、どうやら無類の温泉好きのようだ(笑)。
 コースも終盤となり、「とちの木湯」と呼ばれるスポットを通り過ぎる。と、次の瞬間、道の脇にある噴出孔が急に騒ぎだし、ほどなく巨大な噴水のように熱湯が数メートルの高さで降り注いできた。間一髪で危うく難を逃れる。コースには、こういった間欠泉を伴う場所が3ヶ所あり、歩くには注意が必要だ。とはいえ、春夏秋冬、遊歩道の景色を楽しみながら、間欠泉に間近で出会える場所は国内でも希少で、是非ともおすすめの観光地だ。


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47鳴子H客室夕景s.jpg49鳴子Hダイニングs.jpg52鳴子Hダイニングs.jpg
54鳴子Hダイニングs.jpg58鳴子Hダイニングs.jpg24夕食たまねぎs.jpg23夕食かにs.jpg

変幻自在の七色の湯。
体に沁みる吟醸酒と美味三昧。

 鳴子ホテルに到着したのは、静かな夕暮れどき。雨上がりの山景を部屋からのんびり愛でつつ、夕食前のひと風呂へ。「芭蕉の湯」は、圧巻なまでの広々とした湯船と、シックな間接照明が印象的な大浴場だ。余談だが、実はこの風呂の照明は、東京スカイツリーのライティングを手掛けた照明デザイナー、戸恒 浩人氏の手によるものらしい。湯元の宿らしく、温泉はもちろん源泉掛け流し。赤と黒の大きな甕に溢れ落ちる〈かけ湯〉をした後、とろみのある〈白緑(びゃくろく〉色の湯に肩まで浸かり、そっと目を閉じる。硫黄の香りに包まれた一日だったとはいえ、やはり、この至福には代えられない。しばし内湯を楽しんだあと、露天風呂に移動し、ふと気付く。同じ源泉ながら露天風呂の湯色は内湯とは違うようだ。そればかりか、場所により2色を呈している。まさに、噂どおりの七色の湯だ。
 湯気の匂いも香ばしいダイニングレストランでは、今日も活気に充ちたスタッフの笑顔と、ライブ感あふれる職人のできたて料理が私たちを迎えてくれた。今夜は幸運にも、山河の風景を望む窓際の特等席。まずは、地酒の「芭蕉の雫」で乾杯。「芭蕉の雫」は、地元の新澤醸造と鳴ホテルがつくりあげた吟醸酒で、酒造好適米の〈蔵の華〉の旨味と華やかな香り、すっきりとしたキレ味が、どんな料理にも合う辛口の食中酒だ。ホテルではこの他にも、宮城を代表する銘酒の数々を取り揃えている。
 前回の来訪で、すっかりここの料理のファンになったという連れは、目の前で焼き上げるアメリカ牛の最高グレード〈プライム〉等級の、ジューシーな「アメリカンビーフステーキ」をはじめ、「海老いもとホウキダケの煮物」など、新たなメニューを早速、吟味している。手づくりのデザート「アップルコンポート」までしっかりと味わい、心まで満腹気分の夜が更けてゆく。


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68鳴子街足湯s.jpg69鳴子街風情s.jpg15温泉街s.jpg

にがりでつくる豆乳プリン。
甘さ控えめの湯上りデザート。

 温泉街から立ち昇る湯気が、靄に溶ける翌朝。今回も、ホテル名物の大女将さんの「田舎雑煮」を朝食にしっかりいただき、チェックアウト。ホテル前にある源泉湯小屋がボコボコと音を立てる姿を眺めながら、開湯以来、料理に、癒しに、湯の恵みと歩んできた人々の暮らしぶりを想う。
 帰りは温泉街を少し散策して足湯を楽しんだ後、「高橋豆腐店」の「アンさんの豆乳プリン」(180円・ブルーベリーソース付)と、「豆乳チーズケーキ」(280円)、「くるみ豆腐」(230円)を購入。店は大正時代から3代続く老舗で、宮城県産大豆〈ミヤギシロメ〉を使用した豆腐とヘルシーな豆乳スイーツで知られる。通称〈アンさん〉こと、店の女将のアンへレスさんは、フィリピンから鳴子に嫁いではや20余年の看板娘。卵やゼラチンを使わず、〈にがり〉でつくる人気の「豆乳プリン」は、「いくらでも食べられるかも」の連れの言葉どおり、体に優しい、甘さ控えめのすっきりとした味わいだった。
 穏やかな湯郷が秘めた、猛々しい横顔を訪ねた今回。それは、古く大自然を神と崇めてきた、日本人の心の系譜に触れるひとときでもあった。折しも、2つの古社の式年遷宮が重なる今年。自然に生かされ癒される、そんな私たちの原点を振り返る、神詣でに出掛けてみるのはいかがだろう。
 

【間欠泉と地獄谷巡り 詳細】

9月間欠泉マップ 画像.jpg


■間欠泉(間欠泉センター)

鳴子温泉郷 荒雄岳山麓にある観光名所の一つ。約10分間隔で100〜120度の温泉(弱食塩アルカリ泉)を噴出し、その高さは10m以上。「弁天」「雲竜」の他にも「玉の湯」などの源泉があり、混浴の大露天風呂の他、足湯や温泉卵が楽しむことが出来る。施設内には食堂や温泉卵等(6ヶ入 300円)を扱う売店もある。
住所/宮城県大崎市鳴子温泉鬼首字吹上12
TEL/0229-86-2233
営業時間/9:00〜16:30 ※冬期休業(12/1〜3/末頃)
定休日/水曜 ※10/23〜11/6は営業(2013.10時点)
入園料/大人400円 小中学生200円
駐車場/有
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・鬼首間欠泉露天風呂
吹上温泉にある間欠泉センター敷地内にある入浴施設。巨大な混浴露天風呂とひとつだけ用意された脱衣所というワイルドな造り。湯船から間歇泉は見えないが、周囲の緑を借景に爽快な気分の入浴が楽しめる。入湯料金は、入園料込み。

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■吹上地獄谷
吹上沢に沿い高温の温泉が10数ヶ所にわたって自噴する遊歩道。見学は無料。全長約1km、片道約30分の行程。道中には、生卵を約10分ほど浸せば温泉卵がつくれる「卵湯」や、定期的に数mの高さに噴出する間欠泉もある。噴出する温泉は、いずれも約80度と高温のため、やけどには注意。新緑をはじめ、地熱のために長期間楽しめる紅葉シーズンの景色は見事。鳴子峡の紅葉は有名だが、地獄沢は穴場的存在。
住所/宮城県大崎市鳴子温泉字鬼首
TEL/0229-82-2191(鳴子総合支所地域振興課)
駐車場/有
25地獄谷ワラビ湯辺り.JPG20地獄谷紫地獄あたり.JPG21地獄谷玉子茹場.JPG

■芭蕉の雫(鳴子ホテルオリジナル吟醸酒)
鳴子ホテルが地元、三本木の新澤酒造とつくりあげた食中酒。優しく、華やかな香りの「純米大吟醸」と爽やかな酸味とキレ味の「純米吟醸」の2種類がある。
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■高橋豆腐店
大正時代創業の老舗豆腐店。現主人は3代目。宮城産大豆〈ミヤギシロメ〉を使用した濃厚な豆乳でつくる豆腐と、女将のアンヘルスさん(愛称アンさん)考案の手作り豆乳スイーツの人気店。

住所/宮城県大崎市鳴子温泉新屋敷73
TEL/0229-83-3362
営業時間/8:30〜20:00
定休日/不定休
駐車場/有
http://www.geocities.jp/narukoansan/
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posted by narukoaruku at 14:09 | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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